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オークツリー・クレジット四半期レポート:それでも米国は「特別」なのか?関税による不確実性を背景に期初はボラティリティが上昇したものの、上場実物資産は市場全体に比べて大幅に低いボラティリティを維持し、ポートフォリオにおける有効性を示しました。
4月2日の米国による関税発表を受け、市場は高いボラティリティの局面に入り、期初の株価急落に加え、クレジット・スプレッドの拡大につながりました。その後、関税措置の一時停止、予想を上回るインフレ指標、2025年の利下げの可能性を示唆する米連邦準備制度理事会(FRB)当局者の発言を背景に、株式・債券市場は反発しました。四半期序盤の荒い値動きにもかかわらず、最終的には株式・債券ともにプラスのリターンを記録しました。
2025年上期における実物資産株式のパフォーマンスは、広範な株式市場との比較において、ポートフォリオにおける実物資産の有用性を示しています。右図が示すように、上場実物資産は、関税措置による不確実性が最も高まった局面においても、広範な市場と比べてはるかに低いボラティリティを示しました 。リスクオン相場後、不確実性が再び市場に忍び寄る中で、変化の激しい市場環境下におけるダウンサイド・プロテクションの検討に際しては、こうした実物資産の特性を改めて強調したいと思います。
債券サイドでは、ハイイールド債発行体のファンダメンタルズは堅調であり、 インタレスト・カバレッジ・レシオは健全な水準を維持し、デフォルト率も過去平均付近にとどまっています。一方で、格付けがより低い発行体は関税の悪影響を受けやすいことが明らかになりつつあるというのが当社の見解です。例えば、S&Pグローバルによると、関税リスクが主因となったB格付け銘柄のネガティブ・レーティング・アクションは14件に上る一方で、BBB格付け銘柄では僅か3件にとどまっています。低格付け発行体は相対的に利益率が低く、関税によるコスト増を吸収できる余地が限られています。さらに、現行のバリュエーションは、楽観的なデフォルト率を前提としても、低格付けセグメントにおける信用損失リスクを十分に織り込んでいないと考えられます。したがって、当社はBB格および一部のBBB格など高格付けセグメントを選好し、シングルB格はアンダーウエイト、CCC格は極めて選別的な投資姿勢を維持することが妥当と判断します。
当社では、実物資産セクターのクレジットは、多くの非実物資産セクターと比較して魅力的な特性を有していると考えます。具体的には、平均クーポンの低さ、固定金利債の比率の高さ、国際貿易や地政学的リスクへのエクスポージャーの低さなどが挙げられます。