オルタナ研究所
オルタナティブ投資の主な調査結果とプロファイル:アジア投資家AIメガトレンドから恩恵を受けるテクノロジー関連企業のみに注目する投資家は、潜在的にリスクが低く、まだ広く知られていない機会を逃している可能性があります。
人工知能(AI)やその他の量子コンピューティング応用のブームが、データ需要の爆発的な伸びを牽引しています。このメガトレンドから恩恵を受けるであろうテクノロジー企業の可能性に多くの投資家が注目する一方で、AIのパワーを支える上場実物資産企業には、まだ広く評価されていない魅力的な機会があると当社では考えています。
世界で最も急速に成長している商品であるデータは、輸送、処理、保存、電力供給のために重要な実物資産を必要とします。データへの絶えない欲求は、電力需要の急増につながり、電力網はすでにそのペースについていけなくなっています。AIのメガトレンドによって増大するデータと電力需要の処理に必要なインフラと不動産を更新するためには、多額の投資が必要になるでしょう。
当社では、デジタル経済の基盤を運営する実物資産企業は、半導体企業などの伝統的なテクノロジー企業よりも代替リスクや技術リスクが低い場合があり、AIメガトレンドを取り入れる魅力的な投資機会を提供すると考えています。より広範な上場実物資産市場の4つの主要分野において、AIを背景とする投資機会が提供されており、これらのエクスポージャーはテクノロジー偏重のポートフォリオに分散効果をもたらすと考えます。
AIメガトレンドから明らかに恩恵を受けているのはデータセンターです。データセンターは、世界経済で増大するデータの処理、保存、送信に必要不可欠なインフラを収容しています。事業者がリースする電力メガワット(MW)で測定したデータセンター需要は、AIのブームの中、ここ数年で爆発的に増加しています。
その結果、これらの物件の賃料は上昇しており、供給が限定的であるため、今後も堅調に推移するものと思われます。米国で建設中のデータセンターは530万kW超規模、その多くは稼働が2025年以降となる予定ですが、2024年稼働分のほとんどが事前契約締結済みとなっている状況です1。
また、AIの発展に伴い増加するデータ量に対応するため、通信インフラの増設も必要になります。モバイル通信網はさらに進化し、ダウンロード速度の高速化に伴ってより広い帯域幅が必要になります。通信インフラ企業は、インフラ増設に対する需要と既存資産の更新に向けた追加投資から恩恵を受ける可能性が高いでしょう。
生成AIは計算集約度が高く、必要とされるグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)半導体チップは、従来のプロセッサ・チップよりも多くの電力を消費します。このため、電力密度が高まり、既存と新規データセンター両方からの電力需要が増加します。
コンピューティングとストレージの需要が増加するにつれて、電力消費量は大幅に増加し、2022年の126テラワット時(TWh)から2030年には390TWh(約4,000万世帯分の消費電力に相当)へと3倍になると予想されています2。
電力会社や発電資産の所有者は、電力需要の増加から恩恵を受けるポジションにあります。実際のところ、米国の電力会社複数は最近、各々の地域にデータセンターが立地していることを直接的な理由として電力需要の増加予測を引き上げています。
テクノロジーやデータインフラを利用する顧客と電力事業者との関係は変化しています。電力・公益事業者は、単に電力を提供するのではなく、脱炭素化を視野に入れつつ、信頼性とコスト効率が高いエネルギー提供に向けた長期的なソリューションについて、顧客と協働するようになっています。
再生可能エネルギー発電事業者は、再生可能エネルギーのコスト低下と排出ネットゼロに対する注目の高まりというトレンドから恩恵を受けるべく優れたポジションにあります。さらに、今日の再生可能エネルギーは断続的であり、十分な蓄電設備なくしては、天然ガスなど従来型の低炭素ベースロード電源も重要になります3。
AI関連の電力需要の伸びから最も恩恵を受けると見られるのは、天然ガスの輸送に必要なインフラを提供する天然ガスインフラ企業であると見ています。データセンターの新設によって、電力セクターの天然ガス需要は2020年代末までに20%増加する可能性があります4。
当社では、電力需要の大きな変化から、北米天然ガスのバリューチェーン全体を通してエネルギー・インフラの成長を見込んでいます。電力会社の多くは、天然ガス発電所の増加に対応すべく資金計画の調整を行っており、これら新設設備の稼働には、さらなるインフラと供給を要します。この成長は、2027年までに2倍以上の拡大が見込まれる米国の液化天然ガス(LNG)輸出需要をさらに押し上げると見込まれます。
データセンターが新しい多様な電力源を活用するになるとともに、データセンター企業は、安定した信頼性の高い電力供給、エネルギー効率と運用効率の最適化を可能とする、独自のハードウエア機器ソリューションや機能強化に取り組む必要があるでしょう。より高性能の半導体は熱をより多く発するため、誤動作や故障を防ぐための機器冷却ソリューションへの投資が必要です。また、データセンターの接続障害を防ぐためには、予備電源ソリューションが不可欠です。
データセンターに備えられた予備電源、エネルギー効率や冷却のシステムなども、データセンターの運用コスト全体の削減には欠かせないものであると当社では考えます。
AIメガトレンドから恩恵を受けるテクノロジー関連企業のみに注目する投資家は、潜在的にリスクが低く、まだ広く知られていない機会を逃している可能性があります。投資機会は上場実物資産市場で幅広く提供されており、テクノロジー偏重のポートフォリオに分散効果をもたらすと考えており、当社では、AIパワーを支える屋台骨を提供する不動産やインフラ企業に投資機会を見出しています。このような投資機会にアクセスするにあたっては、AIが急速に進化する中で、最も魅力的な投資機会を活用できる、実物資産に特化したアクティブ・マネージャーと協働することが極めて重要であると考えています。
注記:
1. 出所:JLL、North America Data Center Report。2024年2月28日時点。
2. 出所:バロンズ、「How AI Is Sparking a Change in Power、2024年3月14日」、ボストン・コンサルティング・グループ。
3. 「ベースロード」とは、一定期間に安定的に供給される、または必要とされる最小限の電力量のこと。
4. 出所:ウェルス・ファーゴ、2024年3月31日時点。「Industry Update: Energy AI Power Surge—Quantifying Upside for Renewables & Natural Gas Demand」
5. 出所:米国エネルギー情報局
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