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実物資産四半期レポート:2023年4-6月期

年央の弱気シナリオと強気シナリオを考え、上場実物資産への影響を見ていきます。

2023年8月4日

年央の弱気シナリオ&強気シナリオ:上場実物資産への影響

 

2023年下半期に入り、米国経済に対して慎重な見通しを維持しています。製造業活動、失業保険申請件数、イールドカーブ、消費者信頼感など主要な景気先行指標の多くは、まだ今年の景気減速を示唆しており、現在のディフェンシブなポジションを裏付けています。

しかし、今年の経済は驚くほど底堅く、景気後退に陥るのか、それが何時なのかは依然として不透明です。以下、2023年の米国経済に関して弱気や強気となる理由と、その上場実物資産への影響を考察します。

弱気シナリオ

  • 利益面では景気後退に陥っていると考えています。カリフォルニア州における今年の法人税収入の落ち込みは、州財政悪化の例であり、企業利益の大幅な減少の前触れです。S&P500企業における2023年1-3月期の業績は予想より底堅かったものの、今後数四半期は比較的軟調になると予想されます。また、S&P500インデックスより遥かに幅広く、米国経済全般にわたりあらゆる規模の企業を対象とする国民所得・生産勘定(NIPA)の統計によると、企業利益はS&P500企業ほど堅調ではありません。いずれで見ても企業利益は今や減少しているようです。

  • 中小企業と同様に経済についても、状況はかなり厳しい模様です。ローンの借り入れは難しくなっており、中小企業の採用意欲は昨今、急激に減退しており、従業員数も減少傾向にあります。米国従業員全体の半数近くが中小企業で働いており、過去25年間にわたる新規雇用の約2/3は中小企業によるものです。

  • 米国における求人数は減少しており、時間当たり平均賃金は減速していますが、失業率は比較的安定した水準を維持しています。

  • イールドカーブは、過去30年における景気後退前より大きく逆転しています。景気後退入りを示唆する指標の中で、イールドカーブの形状は非常に有効なサインであり、過去50年を見ると、長期金利が短期金利を下回る逆イールドカーブの後に景気後退に突入しています。

  • 実際のデータに先行する重要な経済指標である予測調査データは、最近急激に低下しています。例えば、米国の製造業活動調査データ(景況感指数)は、2022年11月以降、景気縮小の領域にあり、現在は新型コロナウイルスの感染拡大初期以来の最低水準です。

弱気シナリオ:上場実物資産への影響

  • 実物資産デットが実物資産株式をアウトパフォームすると見込まれます。

  • インフラ株式が不動産証券をアウトパフォームすると予想されます。歴史的に見て、インフラ株式は市場下落局面でアウトパフォームしており、インフレ連動型の収入構造がより顕著である一方、経済成長の鈍化は不動産証券に圧力を加えると見込まれます。

  • インフラ株式の中では、ディフェンシブな特性を持つ公益事業が恩恵を受ける可能性があるものの、公益事業は特に金利上昇による影響を受けやすく、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げにより景気が悪化する場合は、厳しい状況に置かれる可能性があります。

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広範な統計による企業利益はS&P500企業のそれを大幅に下回る

強気シナリオ

  • 失業者1人当たり求人数は最高水準です。すなわち、逼迫した労働市場による圧力は、失業者の大幅な増加よりも求人数の減少を通じて緩和する余地があります。このシナリオは失業のソフトランディングに繋がる可能性があります。

  • 名目と実質(インフレ調整後)双方のデータで見た可処分個人所得は堅調に増加しています。インフレ率が急速に低下し、過去に上昇した賃金が下がらなければ、堅調な実質所得が消費を支える可能性があります。

  • 住宅市場は底入れし、上向きに転じています。住宅市場は通常、経済を牽引します。契約締結済みの新築住宅販売件数は最近、1年ぶりの高水準です。着工前の新築住宅販売件数は、13カ月ぶりの高水準で推移しています。加えて、上場住宅建設企業は継続的な成長に言及しており、住宅ローン申請件数の増加も成長を示唆しています。

強気シナリオ:上場実物資産への影響

  • 実物資産株式が実物資産デットをアウトパフォームすると見込まれます。

  • 不動産証券がインフラ株式をアウトパフォームすると見込まれます。不動産はシクリカルなセクターであり、需給動向に左右される傾向があります。高い経済成長は、供給を上回るペースで不動産需要の増大を支えると予想されます。

  • 不動産証券の中では、サービスとその他のシクリカルな不動産セクターが恩恵を受ける可能性があります。消費者需要の増大は、将来の景気悪化に対する懸念が和らげば、これらのセクターを支える可能性があります。