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欧州高流動性クレジット:EUReka(新たな発見)の瞬間

米国中心のクレジット投資から分散を図る動きが進む中、欧州の流動性クレジットが有力な選択肢として浮上しています。

2025年7月29日

欧州クレジットは、米国中心のクレジット・ポートフォリオにおける有効な分散先として、投資家の関心を集めつつあります。欧州はしばしば、官僚主義的で、米国のような高い商業的ダイナミズムに欠ける地域と見なされがちですが、クレジット投資家にとって、それは必ずしも悪いことではありません。ここでは「マグニフィセント・セブン」級のエクイティ・マルチプルは期待できないかもしれませんが、保守的に運営され、クーポンを着実に支払い、満期管理も堅実、かつ安定した政策環境の恩恵を受ける企業の借り手が中心です。不確実性の高い世界経済においては、こうした特性こそが魅力となり得ます。

もちろん、欧州のクレジット市場は米国ほど大きくはありません。とはいえ、ユーロ建てシニアローンおよびハイイールド債の残高は約6,500億ユーロ、ダイレクト・レンディング市場も活況を呈しており、決して小さな市場ではありません1。英国、ドイツ、フランスを中心とした複数国、そして多様な産業で構成されており、高い分散性を備えたポートフォリオの構築が可能です。

足元において、欧州クレジット市場には、プラスに働く材料がいくつか存在します:

  • 地域内の景気刺激的な財政支出:欧州は、米国との結びつきが薄れつつあるなかで、軍事および産業基盤の強化に向けた支出を拡大する方針です2。とりわけ、ドイツは「債務ブレーキ」を解除し、大規模な公共投資の実施に踏み切っています。こうした政策は、景気後退を回避するうえで支援材料となるでしょう。
  • 堅調な発行体:欧州のクレジット市場では、全体的に信用の質が高いのが特徴です。経済成長の鈍化が過度な融資を抑制し、慎重なバランスシート管理を促してきました。米関税政策の影響を受けにくいとの見方から、デフォルト率見通しはローン市場でわずか2.53%と、非常に低い水準となっています3
  • 債権者間の激しい争いに巻き込まれにくい:LME(ライアビリティ・マネジメント・エクササイズ)の動きが出始めているものの、欧州では実行が難しいのが現実です。取締役に対する厳格な法的義務、複雑な担保・保証構造、協調的な債権者コミュニティが債権者保護の仕組みとして機能しています。

もちろん、欧州の発行体すべてが盤石というわけではありません。健全な発行体が大半を占める中で、少数がストレス下にあるという構図が続くと見られます。銘柄選定を誤れば、ポートフォリオ全体のリターンが損なわれるリスクがあるため、マネージャーにおいては入念な分析が不可欠です。この点をクリアできれば、分散効果と妥当なリスク調整後利回り4の観点から、欧州クレジットは魅力的な投資機会を提供しうる市場と言えるでしょう。

 

本コンテンツは、The Roundup: Top Takeaways from Oaktree’s Quarterly Letters – June 2025 Edition の内容に基づく、またはそこから着想を得たものです。文面はスペースの都合上編集されており、必要に応じて最新情報の反映や加筆を行っています。

1. モーニングスター欧州レバレッジド・ローン・インデックスおよびモーニングスターユーロ圏ハイイールド債の額面合計。
2. EUホワイトペーパー「European Defence  Readiness 2030」。
3. フィッチ、推計による2025年欧州シニアローンのデフォルト率。
4. この記述は、欧州と米国のクレジット市場間の過去の相関関係に関する内部分析、および2025年6月現在の市場状況に基づいています。「妥当なリスク調整後利回り」の評価は、将来の金利環境、クレジットスプレッド、デフォルト率に関する仮定を反映していますが、これらの仮定は実現しない可能性があります。実際の結果は、市場状況、経済要因、または発行体固有の動向の変化により、大きく異なる可能性があります。

定義

マグニフィセント・セブン:マグニフィセント・セブンとは、AppleAmazonAlphabetNVIDIAMetaMicrosoftTesla7社を指します。

債権者間の激しい争い:一部の債権者を優遇し、他の債権者に不利益を与えるような攻撃的な負債管理手法。しばしばリストラクチャリングやプライミング取引などの形で実行され、債権者全体の合意を得ないまま進められることが多く、債権者間に対立を引き起こします。

LME(ライアビリティ・マネジメント・エクササイズ):財務的に困難な状況にある企業が、債務の買戻し、交換、条件変更などを通じて既存の債務を再構成し、財務負担の軽減や破綻回避を図る戦略的手法です。

重要な開示事項

すべての投資にはリスクが伴います。投資の価値は時間とともに変動し、投資家においては、利益を得るもしくは投資の一部または全てを損失する可能性があります。過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。

本資料は、投資調査の独立性を確保するために設けられた法的要件に基づいて作成されたものではなく、投資調査の配信前取引を禁止する規制の適用も受けません。

資産クラスとして、プライベート・クレジットは多様なデット商品で構成されています。それぞれのリスク/リターン特性は異なるものの、プライベート・クレジット投資では、資金調達の選択肢が限定的な企業へのオポチュニスティックな投資を模索するため、一般的に、上場のものと比較してデフォルト・リスクが高くなります。

プライベート・クレジット投資では、通常、発行体が投資適格未満または無格付けであるため、より高いリスクの対価として利回りもより高くなります。

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