オルタナ研究所
オルタナティブ投資の主な調査結果とプロファイル:アジア投資家上場不動産リートのほとんどに関しては、ファンダメンタルズは堅調でデフォルトリスクは低く、魅力的なバリュエーションを背景とした絶好の投資機会が提供されています。
最近は米国商業用不動産に関する暗いニュースを目にする機会が多くなっています。その多くのストーリーは、米国商業用不動産は数多くのデフォルトとバリュエーション調整に見舞われ、それは金融市場の危機を示唆するサインである可能性が高いというものです。
実際の状況は、これらニュースが語るように深刻なのでしょうか?当社は違うと考えます。確かに、デフォルトが発生する可能性は高いものの、幅広い市場で起きるとは考えていません。デフォルトが予想されるのは、主に苦境にあるセクター(例えばオフィス)や、需給やキャッシュフロー面で問題を抱える個々の物件だと当社では見ています。これら以外のセクターや物件でデフォルトが発生する場合、高レバレッジや金利の見直しなど、物件レベルにおける融資関連の問題が引き金となると考えられます。とはいえ、上場不動産リートのほとんどに関しては、ファンダメンタルズは堅調でデフォルトリスクは低く、魅力的なバリュエーションを背景とした絶好の投資機会が提供されています。
米国では数多くの物件タイプで力強いファンダメンタルズが確認されています。ナリートのデータからは引き続き、幅広い物件タイプにおけるキャッシュフローの伸び、安定した業績、長期平均を上回る入居率が見られています。このような堅調なファンダメンタルズを背景に、既存物件NOI成長はインフレのペースを追い抜いています。また、過去最高水準にあった賃料の伸びは、短期的な不透明感を受けて正常化しつつある一方で、複数の主要な不動産タイプに関しては、長期の需要ドライバーが支援材料になると見ています。レジデンシャル、産業用、ヘルスケアといったセクターでは良好な需給トレンドがサポートを提供する一方で、クオリティの低いオフィス資産は引き続き厳しい環境となるでしょう。
米国リートのユニバース全体的にバランスシートは力強い内容となっています。世界金融危機以降、米国リートはレバレッジ水準の大幅な引き下げに取り組んでおり、以下の図表が示す通り、足元では34%まで低下しています。
レバレッジ水準の低下とともに、インタレスト・カバレッジ・レシオも改善しています(以下図表を参照)。米国リートの85%以上でインタレスト・カバレッジ・レシオは3倍超で、2007年における40%から上昇しています。さらには、加重平均したローンの残存期間は2022年年末において82か月と、2006年末の69か月から拡大しています。高いインタレスト・カバレッジ・レシオとより長期のローン残存期間によってデフォルトのリスクは限定的であると言え、資産クラス全体における金利と借り換えリスクは最小限にとどまっていると見られます。
過去と比較すると、バリュエーションは極めて魅力的な水準にあります。ファンダメンタルズは堅調さが継続し、バランスシートの改善がみられる一方で、急激なインフレと借入コストの上昇によって不動産証券に下方圧力がかかっています。この結果、グローバル上場不動産は過去平均を大きく下回るディスカウントで取引されています。
不動産株には相当行き過ぎた下方修正が入ったと当社では見ています。現在、NAVに対するディスカウント幅は近年で最大となっています。過去の経験からは、この様な大幅ディスカウントでの不動産株購入は、長期にわたり極めて力強い絶対リターンを得る可能性が示唆されています。
バリュエーションの調整、バランスシートの改善、堅調なファンダメンタルズが同資産クラスで幅広く確認されていることからも、グローバル上場不動産では、魅力的な長期の投資機会を掴む絶好のエントリーポイントが提供されていると見ています。しかし、足元の環境下で効率的なかじ取りを行い、投資機会を獲得するには、アクティブ運用のアプローチが必要不可欠であると考えます。
アクティブ・マネージャーは、物件タイプやクオリティ、バリュエーションの面で目利きのある運用者です。この様なマネージャーこそ、今日の市場におけるストレス要因に見舞われている、またはバランスシートが不健全な不動産タイプや物件を避け、最高クオリティの物件や経営陣に注目しながら、事業環境の変化に沿ったポジショニングを行い、リスク調整後リターンの観点から投資妙味のある機会を獲得することが可能です。